第18章 お見舞い
「あ…」
……そっか。そういう意味ね…。
確かに、脳しんとうの意識障害から目覚めた直後は怖くてたまらなかった。
でも…、リヴァイ兵長がこれからも守ると約束してくれた。何も怖くないとささやいてくれたときに握られていた手の熱さがよみがえる。
「はい、大丈夫です。怖かったんですけど、兵長に助けていただいてこうして生きてますし…。他の皆さんにも支えていただいて…」
マヤは想いを伝えようと、ゆっくりと言葉を選ぶ。
「調査兵でいる限り… 巨人との戦いは避けられないし、恐怖心がないっていったら嘘になるけど…。でも調査兵団の一員である限り私には… 団長や兵長、分隊長の皆さんや先輩方、同期や後輩…。仲間がいます。そう思ったら怖いのなんか、どこかへ行っちゃいます!」
そう言って見上げてきた瞳は、仲間への信頼に満ちた希望の光で輝いている。
……綺麗だ…。
ミケは胸の奥の何かが、ぎゅっと締めつけられるような感覚に襲われる。
ここが医務室ではなく自身の執務室であったならば、思わずマヤを抱きしめていたかもしれない。
「……そうだな。俺も皆がいるから戦える」
急速に湧き上がった欲望を胸の内に秘めたまま、会話をつづけた。
「ところで…、リヴァイは来たか?」
唐突に出てきた “リヴァイ” という単語に、目に見えてマヤはびくっと肩を震わせた。
「……来てませんけど」
そう小さな声で返してきたマヤの頬が赤い。
「そうか…。てっきり俺より先に来ているかと思ったんだがな」
「なんでですか?」
「それは…」
ミケはスペリオル村の外で、巨人の捕獲に向かったハンジを追いかけていたときのことを思い出す。
血相を変えて本部に飛びこんできたニファから事情を聞き、可能な限り早く駆けつけたつもりだが、実際には事後だった。
現場とおぼしき場所から矢のような速さでこちらに向かってくる黒い馬。
……あれは… リヴァイのオリオンだ。