第18章 お見舞い
「ふむ」
オルオの返事にうなずくと、アウグストはマヤに命じた。
「では… マヤは昼食をとりなさい」
「はい」
「食べ終わったら今までどおりに置いといてくれ」
「わかりました」
「ふむ。では何かあったら呼んでくれ」
そう言い残しアウグストは自身の机へ戻った。
サイドテーブルに置かれたままの昼食は、卵のサンドイッチにポテトサラダだ。
「今日はサンドイッチか。オルオ! うちらも食べに行くよ」
「あいよ」
ペトラにうながされ立ち上がったオルオがマヤに。
「早く元気になれよ。また早朝訓練しような!」
「うん! オルオ、ありがとう」
「じゃあマヤ、また来るからね。ちゃんと安静にして早く治してよ」
「うん。あ、待ってペトラ!」
行きかけたペトラを呼び止めた。
「部屋から持ってきてほしいものがあるんだけど… いい?」
「あ~ うん、もちろん! 何を取ってきたらいいの?」
「タオルと洗面道具…。あ、ほらポールハンガーにかけてる入浴セットのバッグあるでしょ?」
「はいはい、あれね」
「うん、それとタオルはクローゼットの引き出しにあるから二枚お願い」
「オッケー」
「あ、それと本も持ってきてほしいんだけど…」
「あの私に似てる挿絵のやつ?」
「そうそう。机の上にあるから」
「わかった。任せといて!」
どんとペトラがこぶしで胸を叩くのと、オルオが話に首を突っこんでくるのが同時だ。
「ペトラに似てる挿絵?」
「そうなの。主人公の女の子の顔がね、ペトラにそっくりなのよ」
「へぇ…。狂暴な女戦士の冒険物語とか?」
「ちょっと!」
ペトラが気色ばむ。
「ううん。恋愛小説のヒロインなの。オルオも読む?」
にこにこしているマヤに慌ててオルオは断った。
「いや、やめとく」
「面白いのになぁ…」
残念そうにしているマヤに、ペトラが訊いた。
「じゃあタオルと入浴セットとあの本でいいのね?」
「うん。……あ、部屋の鍵…」
マヤはベッドから立ち上がるとハンガーにかけられている兵服の内ポケットから鍵を取り出した。
「じゃあ、悪いけどお願いね」
鍵を受け取ったペトラは、
「あとで持ってくるね~」
と手をひらひらと振りながら、オルオとともに出ていった。