第18章 お見舞い
「だからいつか… 先生のお手伝いをしてくださる方が、ここに来たらいいなぁって思います」
「そうだな、気長に待つとするか」
マヤの優しさにふれ、アウグストも待ってみようかという気になる。
「そうだよ、先生! そのうちなんとかなるんじゃないっすか?」
オルオに同意しつつペトラも笑顔を向ける。
「だね。あのね先生、うちのおじいちゃんも言ってました。“果報は寝て待て” って!」
「ははは、そうだな。ふむ、ペトラのおじいさんの言うとおりにするよ」
アウグストはおだやかに微笑んだ。
「ペトラのおじいちゃんって、ことわざが好きなんだね」
前にも確か、ペトラのおじいちゃんのことわざを聞いたことがあるなぁと思い出しながらマヤが言うと、オルオが叫んだ。
「そうなんだよ。ガキのころから俺の顔を見ると “舌は禍の根だぞ、オルオ” って口うるさく言うんだぜ? あのじいさんは」
「それはあんたが子供のころから、必要以上にぺらぺらしゃべるからでしょ!」
「何を! 俺がいつ必要以上にぺらぺらしゃべったっていうんグアッ… ガリッ!」
お約束どおりに舌を噛んだオルオに心底冷たい視線をペトラは向けた。
「ここに来てから二回目だよね? ほんっといい加減にしてほしいわ」
「今噛んだのは、お前のじいさんのせいだろ!」
「はぁ?」
目の前でまたもや繰り広げられる二人のやり取り。マヤは笑いながら間に入った。
「もう二人とも落ち着いてよ。オルオ、大丈夫?」
「あぁ、平気平気。やっぱマヤは誰かと違って優しいよな~」
「……なんですって!」
延々と繰り返されそうなもはや痴話喧嘩に、終止符を打ったのはアウグストだった。
「ふむ、そこまでだ。オルオ、軟膏でも出してやろうか?」
「いえ、大丈夫っす」