第18章 お見舞い
「マジ直球っすね」
笑うオルオに、アウグストはにやりと笑い返した。
「まぁな、回りくどいのは性に合わんからな」
「それで団長はなんて…?」
心配そうに問うマヤの方を向くと、アウグストは答えた。
「団長はこう言った。“噂話を根拠に決定できるほど簡単な問題ではないので今ここで回答はできない。だが壁外調査が増えるならば医務にかかる負担が大きくなるのは必至。無論前向きに検討しましょう” とな。検討するなんて言葉は体裁よく拒否されたと思ってな、今返事をくれとわしは詰め寄ったんだが…」
そのときのエルヴィンの何食わぬ顔が脳裏に浮かんできた。
「“その噂が事実だったとして寄付なんてものは貴族の気まぐれ…。恒久的でない限り、決してよりどころにはできぬゆえ先生のご希望には今は添えかねます。だが気まぐれがつづくのならば、医務の拡充が必須であると説けば、叶う道はひらけるかと。……ただ所詮、噂は噂にすぎないので、そもそも道があるのかどうかも不確かですが” ……団長に立て板に水のように返されて、わしは何ひとつ言えずに負け犬のようにすごすごと帰ってきたという訳だ。情けないだろう?」
自分で自分をあざけるように笑ったアウグストにマヤたち三人はかける言葉が見つからず、うつむいている。
「……でも先生」
ゆっくりと言葉を選ぶようにしながらマヤが顔を上げた。
「きっと団長は… 苦しい財政状況の中でも先生や私たち兵士のことを一番に考えてくださると思います」
「うん、そうだよね!」
ペトラが同調して、オルオもつづいた。
「そうだな。なんてたって俺らの団長だもんな!」