第18章 お見舞い
「噂?」
ペトラが訝しげな声を出した。
「ふむ。半年経ってわしも、一人での仕事になんとか慣れてきたのだが、やはり看護師のありがたみを身にしみて感じておった。だがマヤも言ったとおり、予算減額人員削減… 王都での会議で決定されたものをどうにかできるとは思っておらんかった。しかしある噂を耳にしてな…。立て続けに壁外調査がおこなわれたなと思っていたら、貴族から多額の寄付があったらしいじゃないか…」
早速ペトラが多額の寄付という言葉に関心を示した。
「……多額の寄付? オルオ、知ってた?」
「いや… 初耳。でもそう言われたら壁外調査、結構すぐにあったよな」
二人の会話を聞きながら、マヤは団長室で寄付の件を聞かされたことを思い出していた。
……エルヴィン団長が言ってたわ。名前は出せないけどある貴族から多額の寄付があったとか。確か… 条件があって、壁外調査を数多くこなすことじゃなかったかしら…。
「マヤは? 知ってた?」
気づけばペトラが自身の顔をじっと見ている。
「あ、うん。詳しいことは知らないけど、団長から貴族から寄付があったって聞いた。ほら、あの星の形のクッキーをもらったときよ」
「あぁぁ…、そうなんだ」
ふぅんといった表情でいるペトラを横目で見ながら、アウグストはつぶやいた。
「ふむ。マヤも聞いたなら噂は本当だったんだな。わしが詰め寄ったら涼しい顔ではぐらかしていたが…」
オルオが訊く。
「どういう風に直訴したんですか?」
「単刀直入だよ。“寄付があったという噂を聞いた。本当なら、こっちに少しまわして看護師を雇ってくれ” とな」