第18章 お見舞い
「はっはっはと顔を上げて笑いながら “どうですか、先生? 傑作だと思いませんか? 内地の臆病で無能な貴族たちに真実を突きつけられるとは” とな。わしはどう答えていいかわからず、リヴァイ兵長に助けを求めてソファの方へ振り向いたんだが、先ほどと全く同じ不機嫌そうな顔で微動だにせず…。戸惑うわしに団長がさらに声をかけてきた。“アウグスト先生、予算減額、人員削減の決定を覆せなかったのはすべて私の責任です。申し訳ない” そして立ち上がると深く頭を下げたんだ。団長はもう笑っていなかった…」
アウグストはそこまで話すと、黙って耳を傾けている三人の顔に注意を払った。
マヤは青ざめ眉間に皺を寄せていた。ペトラは悔しそうにくちびるをきりりと噛んでいる。そしてオルオも歯ぎしりして、こぶしをぐっと握りしめていた。
「……申し訳ないと頭を下げる団長を前にして、わしはもう何も言えんかった…」
そのときのエルヴィン団長の表情の変化を思い返すと、胸がいっぱいになる。
「……そういう訳でな、わし一人での勤務となった」
「……そうだったんですか…」
ぽつりとつぶやくマヤ。
ペトラとオルオは互いの顔を見ながら。
「そんなことがあったなんて…」「全然知らなかったよな…」
「ふむ。まぁ表向きにはなんの発表もなく決まったことだからな」
しばらく誰も何も言わなかったが、マヤが先ほどから気にかかっていることを口にした。
「あの… そんな事情があったのに、どうしてまた看護師さんの復活を? 予算が理由なら… どうにもならないんじゃないんですか?」
もっともなマヤの問いに、アウグストはにやりと笑った。
「ふむ、それなんだが。ある噂を耳にしてな…」