第18章 お見舞い
気を遣って愛想笑いをしたオルオに目もくれずにアウグストは話をつづけた。しゅんとするオルオ。
「団長は厳しい表情を崩さずに告げてきた。“アウグスト先生、来週から一人で勤務してもらうことになった” とな。理由を訊けば “調査兵団の医療費予算の大幅減額。逆に憲兵団の予算は増額” と…。わしは怒鳴ったな、“なんだそれは!” と。だってそうじゃないか。医療費なんてものは調査兵団が三兵団の中で一番必要だというのに減額だなんてとんでもない話だ! すると今までわしの顔を凝視しながら話していた団長が下を向いてな…、肩が震えているなと思ったら声が響いた。“先生、私も同じことを会議で言いましたよ。そうしたらどういう答えが返ってきたと?” わしは団長の震える肩と声ばかり気にかかって黙っていた」
そこで話を切ったアウグストの顔を、マヤたち三人は息をするのも忘れてまじまじと凝視していた。
「団長はすぐに答えをくれた。“調査兵はどうせ死ぬから医療費は要らない” とな」
「……なんですか… それ…」
眉間に皺を寄せるマヤ。
「ひどい! 人のこと、なんだと思ってんのよ!」
「ひでぇ! ふざけんなよな!」
激怒するペトラにオルオ。
「ふむ、わしも同じように怒りがこみ上げてな、それを団長にぶつけようとしたとき、気づいたんだ。肩が震えているのは、声の様子がいつもと違ったのは… 笑っていたからだと」
「「「え?」」」
驚く三人に深くうなずきながら。
「そうなんだ。笑っていたんだよ、エルヴィン団長は。下を向き肩と声が震えていたのは、てっきり怒りなのかとわしは思っていたのに…。呆気にとられているわしに気づいた団長は、もう隠そうとはしなかった」