第18章 お見舞い
「看護師の復活を直訴してきたんだ」
「「「看護師?」」」
思いがけない話に、仲良し同期三人は全く同じ反応をする。おうむ返しをした声は裏返り、目は大きく見開かれていた。
「そう、看護師」
調査兵団の医務室に勤務している医師は、今現在アウグスト・オドーネただ一人だ。
だがマヤたちが新兵のころは看護師がいた。それがいつの間にやら見かけなくなり、アウグスト医師がたったひとりで医務をこなしている。
「前はいたよな…、看護師…」
オルオのつぶやきに、
「うん…、去年の冬くらいから見かけなくなった…」
とマヤがあごに手をやりながら応じると、ペトラもそれに同調した。
「そうだね」
三人の様子を見渡しながら、アウグストは語り始めた。
「……そう、昨年の最後の兵団合同会議の翌日にな… 団長室に呼ばれた。わしはなんだろう? と思いながら出向いたことを今でもよく覚えている。……寒い日だったな」
その日の映像が浮かんでくる。ストーブの上に乗せたやかんがしゅんしゅんと音を立て、窓は結露していた。
「団長室に入ると険しい顔をした二人がいてな…」
「二人?」
思わず声が出るペトラ。
「エルヴィン団長とリヴァイ兵長だ。二人で王都から帰ってきたばかりだった。団長は正面の執務机の椅子に座り入室したわしを見据えていた。兵長はソファに足を組んで座っていたが… これまた眉間に皺を寄せていてな…」
と、そこまで話してからふっと笑った。
「まぁでも…、いつもあんな顔だがな」
マヤたち三人は、ここは笑うところなのかと顔を見合わせた。ペトラに睨まれ、オルオが慌てて声を出した。
「あっはっは、そうっすね!」