第18章 お見舞い
「……私も兵長にお姫様抱っこしてもらえないかなぁ」
「いざお前を抱き上げたら、あまりの重さに兵長のクールな顔も崩れるんじゃないか?」
「は? 何を言ってんのよ! 私とマヤは身長だってそんな変わんないわよ!」
「同じくらいの背でもよ、マヤはこう… 華奢な感じがするけど、お前は骨太だろ? ケツもでけぇし」
「なんですって!!」
ペトラとオルオは延々と言い争いをしていたが、ふっと二人仲良くマヤがぼーっとしていることに気づいた。
「マヤ? 大丈夫? 疲れ出た?」
「おいどうした? ぼーっとして」
呼ばれた気がして顔を上げると、心配そうにしている二人の顔。
「あっ うん、大丈夫。ちょっと考え事してた」
マヤは慌てて答えると、ごめんねと手を合わせた。
「ならいいけど、お見舞いに来て具合悪くさせてたらシャレにならないもんね」
そうペトラが口にしたのと、ばたんと扉の閉まる音がしてサンダルの足音がぱたぱたと近づいてくるのが同時だった。
「……にぎやかだな。オルオも来てたのか」
顔を出したアウグストに、オルオが頭を下げる。
「お邪魔してまーす」
「ふむ」
アウグストはオルオに軽くうなずくと、持っていたトレイをサイドテーブルに置いた。
「マヤ、少し早いが昼食を持ってきた」
「ありがとうございます」
「先生、どこ行ってたんですか? 気づいたらいなくてびっくりしました」
ペトラの問いに、はははと笑いながら答える。
「わしだってこう見えても暇じゃないんだ。医薬品や備品の発注書をエルヴィン団長に出しに行ってたんだ。それから…」
アウグストは何故か声を落とした。
「今から話すことは内緒で頼むぞ?」
何を話すのだろう? とマヤ、ペトラ、オルオの三人は若干緊張して返事をした。
「「「はい」」」