第18章 お見舞い
「ちょっとやめてよ、マヤ! 夫婦漫才だなんて!」
嫌がるペトラの隣で “夫婦” という言葉にまんざらでもなさそうなオルオ。
そんな二人を微笑ましく思いながら。
「いつまでも二人、そのままでいてね!」
「え~、やだ!」
即答するペトラを複雑そうな表情でオルオは見ていたが、はっと何かに気づいたようにマヤの方を向いた。
「来てそうそう馬鹿騒ぎしちまったけど…。マヤ、具合はどうなんだ?」
「あ、うん。大丈夫だよ。じっとしてたら治るみたい」
「そうか、良かったな! まぁ廊下にまで二人の声が響いてたから、元気なんだろうなとは思ったけど」
それを聞いたペトラが眉を上げた。
「ちょっと! そこまで騒いでないわよ。っていうかオルオ、あんたいきなり現れたけどノックとかしたの!?」
「したわ! したけど返事ないし入ってきたらお前らがわーわー騒いでたんだろうが」
不思議に思ったマヤが口を挟んだ。
「……アウグスト先生は?」
「ん? いなかったけど?」
そう言いながらオルオはカーテンを引いた。マヤとペトラは同時に振り向く。
「あっ」「ほんとだ、いないね」
首を傾げるマヤ。
「あれ? 先生、いつからいないんだろう?」
入室したときの状況を思い出すペトラ。
「私が来たときは、なんか書類を読んでたよ」
「あれだろ? お前らが… つーか主にペトラの声がうるさくて出ていったんだろうよ」
「何よ、それ!」
「まぁまぁ、そんな喧嘩しないで」
取り成すマヤに、オルオは訊いた。
「なぁ、俺が来たとき… 何を騒いでたんだ?」