第18章 お見舞い
「もう! 汚いわね! ここは医務室なのよ、舌噛むんじゃないわよ!」
「うるせーな! もうちょっと他に何かねぇのかよ。心配するとか…」
「はぁ?」
……やっぱりこの二人、最高!
マヤは笑いがこみ上げてきて、肩を震わせながら下を向いた。
それに気づいたペトラは、マヤが泣いていると勘違いして慌てて声をかける。
「ごめん、マヤ。大丈夫?」
「……違うの。嬉しいの」
顔を上げた琥珀色の瞳には、うれし涙と笑いでこみ上げた涙の両方があふれている。
「二人とも、ありがとう」
マヤは潤んだ瞳で大切な友を見上げた。
「あのね… 聞いてくれる? ……巨人に捕まって、もう食べられる、最期だって思ったときね…」
「「………」」
マヤの口から最期だなんて言葉が飛び出したので、ペトラとオルオは顔を見合わせた。
「私の名前を呼ぶ二人の声が聞こえた気がするの」
「おい、それって…」
オルオの言葉を引き継いで、ペトラが話す。
「うん。マヤ、それ駆けつけて叫んでたうちらの声だよ!」
「そっか…、来てくれてたんだもんね。私ね、もう死ぬから幻なのかなって思って…。でね、二人の声が聞こえたから二人がじゃれ合ってるところが浮かんだの。本当にそのとき、二人が好きで友達になれて良かったって思ったよ…」
「マヤ…」
ペトラはしんみりとして、
「よせやい、照れるじゃねぇかよ!」
オルオは横を向いて頭をかいた。
「あのときはもう駄目だと思ったから、こうやってまた二人に会えて、二人の夫婦漫才が見れて嬉しい。生きてて良かった」