第18章 お見舞い
「だから、マヤが兵長の首に腕をまわして抱きつく形で村まで帰ったんだってば!」
「………」
……終わった。
そんな… 抱き合う形で馬に乗っただなんて…。
今まで目が合って恥ずかしいとか、手を握られて恥ずかしいとか、水を飲ませてもらうときの頭の下に差し入れられた手が恥ずかしいとか色々思ってきたけれど、そんなものとはレベルが違いすぎる。
「もう駄目…。恥ずかしすぎて死ぬ…」
知らない間にそんな風に密着していたなんて…!
「もう気にしすぎ! 緊急事態だったんだから仕方ないじゃん」
「わかってる! わかってるよ? でも今は緊急事態じゃないんだから、想像しただけで恥ずかしくて… 無理!」
「まぁね~、わからないでもないけど…」
とペトラがそこまで言ったとき、唐突にカーテンがひらかれた。
「何を大きな声出してるんだ?」
マヤとペトラは同時に叫んだ。
「「オルオ!」」
空いている丸椅子にどさっと座ったオルオにペトラが怒鳴る。
「ちょっと遅いんじゃない? 何してたのよ?」
「腹が痛くてさ~」
「え!? ちゃんと手、洗ってきたでしょうね!?」
「は? 当たり前だろ!」
「ちょっと、離れてよ!」
「何を! 置かれてた椅子に座っただけだろ?」
目の前で早速繰り広げられているペトラとオルオのいつものやり取り。
……私、本当に帰ってきたんだ!
マヤは懐かしくて、また鼻がつんとしてくる。
「ペトラ、オルオ…」
二人にかけた声が、涙色に滲む。
小突き合っていた二人は慌ててマヤを見る。
「ちょっと! あんたのせいでマヤが泣いてるでしょ!」
「なんでそうなるんだグアッ… ガリッ!」
オルオは盛大に舌を噛んだ。