第18章 お見舞い
「でね、話のつづきだけど。村に帰ることになって、そのときにはすっかり巨人の腕は蒸発してたんだけどね」
「うん」
ペトラは両手で抱き上げる仕草をしながら説明する。
「兵長がこう… がばっとマヤを抱き上げて…」
「え? 兵長が…?」
「そう。こう肩のあたりと… こっちの手は膝の裏にまわしてぐいっと抱き上げてさ。いわゆる “お姫様抱っこ” ってやつだよ!」
「えええ! 嘘でしょ!?」
「いやいや、ほんとだって」
……兵長が私をお姫様抱っこした!?
どうしよう。恥ずかしすぎる…。もう顔を合わせられない。
「ペトラ…。それが本当だったらもう私、兵長に会いたくない…」
「なんで?」
「なんでって! そんなの決まってるでしょ。重かっただろうし、もしかして私、変な匂いがするとか思われてたらどうしよう…!」
「そんなの大丈夫だって」
「ペトラだって自分に置き換えて考えてみてよ? 兵長にお、お、お姫様抱っこなんてされたら恥ずかしいでしょ?」
うーんと首を傾げてから、ペトラは悪戯っぽく笑った。
「恥ずかしいけど、嬉しい方が勝つ! それにあのときはほんと緊急事態だったんだから、重いとか臭いとかないって」
「……だといいけど…」
心配そうに下を向いたマヤにペトラは慰めるつもりで言ったのだが、結果としては追い討ちをかける言葉を放った。
「それにお姫様抱っこくらい全然大したことないって! 兵長はそのあと馬に乗ってね、マヤの腕を自分の首にまわさせて正面から抱き合う格好で村に帰ったんだから!」
「……えっ!」
せっかく良くなっていたマヤの顔色はさーっと青ざめた。
「今… なんて…?」