第18章 お見舞い
ふぅっと一息つくと、ペトラは話をつづける。
「それで兵長が私にマヤの馬を連れて帰れって言おうとしたんだと思うけど… そのときにね、マヤの馬が… えっと名前なんだっけ?」
「アルテミスよ」
「そうそう、アルテミス! アルテミスが、ばーって駆け寄ってきて兵長と見つめ合ったのよ! それで兵長が確か… マヤと村に帰るからついてこれるか? みたいなことを言って、そうしたらアルテミスがまるで言葉がわかるみたいに返事したのよ! そのあと兵長は私に、マヤの立体機動装置を運ぶように言ったの」
「そうなの… アルテミスが…」
心を通わせている大切な愛馬が、命の恩人のリヴァイ兵長と意思疎通を図ったと聞いて、マヤは胸がいっぱいになった。
……アルテミスが兵長と顔を合わせたことなんてないと思うけど、きっと私を助けたところを目の前で見て、アルテミスには兵長が信頼できる大切な人だってわかったのね。
壁外調査の前日に厩舎の馬房で自分が熟睡しているときに、アルテミスとリヴァイが出会っていることなど知らないマヤはそう思った。
「アルテミスってすごいよね。結局ずっとオリオンの後ろにぴったりついて走ってたよ」
「うん、とっても賢くて優しくていい子なの」
「だね~! あ、そうだ。奇行種を討伐したときもアルテミスに救われたんだってね。タゾロさんが言ってた」
「そうなの。あぁ…、アルテミスに会いたいなぁ」
「ここを出てもいいって許可が下りたら、一番に会いに行けば?」
ペトラの提案に同意した。
「そうする!」
巨人に掴まれていた場面を話していたときに少し青ざめていた顔色が、今ではすっかり良くなってほんのり紅い。
……良かった、マヤが元気を取り戻して。
ペトラは心の中でそう思いながら、また話し始めた。