第18章 お見舞い
ペトラは少し離れた部屋の隅に積み重ねて置いてある丸椅子を二つ取ってくると、ベッドの脇に置いた。カーテンを閉めると早速座る。
「もう~、泣かないで! 私も泣いちゃうじゃん」
丸椅子の数に不思議そうな顔をしているマヤにすかさず言う。
「オルオもすぐに来るから」
「ほんと?」
「うん、一緒に来ればいいのにさ。先に行ってくれって…。まぁ、あいつのことなんかどうでもいいね!」
辛辣に言い放つと、すぐさま話題を変えた。
「でもほんと久しぶりだよね? 私も会いたかったよ!」
「うん…。壁外調査の前の日のお昼から会ってないもん」
「そう言われたらそうだね。遠くから姿を見かけたりはあるけど…。っていうか私は巨人にやられたマヤを近くで見てるけどね」
「……そうなの?」
「あれ? 聞いてない?」
「うん」
「……で、どう? 大丈夫なの? 骨は折れてないって聞いたけど…」
ペトラは眉を寄せて心配そうに訊く。
「筋肉を痛めてるだけみたい。しばらく安静にしたら治るって」
「そう、良かった! もうほんとね、倒れてるの見たときはどうなっちゃうかと思ったわ」
「………」
二度も巨人に殺されかけたところを見たと話すペトラに、マヤは一体どういう状況だったのだろうと疑問が湧いた。
「ねぇ ペトラ。私を捕まえてた巨人を倒したのって兵長なんでしょ?」
「うん」
「私、兵長が来てくれたこと知らないの。ペトラもいたんだよね? そのときのこと… 教えて?」
「いいよ」
ペトラは一瞬天井を見上げて、うーんと思い出すような素振りをしてから一気に話し始めた。
「遺体回収の任務の帰りに信煙弾を見て、兵長とオルオと、あとタゾロさんとで向かったの。最初はよく見えなくて… あれは巨人が倒れてたから低くて見えなかったんだよね」
……そうだ。あのとき、足止めするためにアキレス腱を斬りつづけていたから巨人はうつぶせたままでいた。
マヤは思い出して小さくうなずいた。
「うん、そうだね」