第18章 お見舞い
「ペトラが? ここに?」
ぱっとマヤは顔を輝かせた。
「あぁ、昨日ここを出たあとに下で会ってな。見舞いたいと言うんで、もう遅いから明日わしの勤務時間内に来いと言っておいたんだ」
「そうだったんですか」
……ペトラがお見舞いに来てくれる!
マヤは嬉しくてたまらなかった。
壁外調査の帰還後は、幹部は事後処理に多忙を極める。しかし一般兵士は帰還当日と翌日は休日として扱われるのだ。
今日は、壁外調査帰還日の翌日。ペトラは一日公休であるからして、きっとすぐにでも来てくれるに違いない。
早くペトラに会いたくて、マヤはうずうずした。
そんなマヤの様子に “楽しみだな” と声をかけるとアウグストはカーテンを閉めて出ていった。
……ペトラ、まだかなぁ。
眠ってしまうか、窓の外を眺めるしかできない身にとって、待つ時間は結構長い。
先ほどから何度も壁の時計を見てしまう。
……もう9時半かぁ…。
ふぅっとため息をついたそのとき、コンコンとノックの音が響いた。
「失礼します」
元気な声とともに入室してきたのは、待ちに待ったペトラだ。
マヤからはペトラは見えないが、声ですぐにわかった。
「マヤのお見舞いに来ました」
「……来たな。お待ちかねだよ。あそこだ」
「はぁい」
二人のやり取りが聞こえたあと、ペトラの明るい声が近づいてくる。
「マヤ~!」
「ペトラ!」
マヤも大きな声で名前を呼び返した。
シャッと白いカーテンが引かれて、ペトラが姿を現した。
もはや懐かしくて、涙が出そうになる。
「昨日、来れなくてごめんね~!」
両手を合わせるペトラに、ぶんぶんと首を横に振りながら半分涙声になりながら。
「ううん、来てくれてありがとう。会えて嬉しい…」