第18章 お見舞い
「それは良かったな」
「はい。ちょっとお行儀が悪いけどスープにパンをつけちゃいました」
えへへと笑うマヤに、アウグストは微笑んだ。
「わしもそれ、好きでよくやるけど必ずかみさんに怒られるな」
「でしょう? 私も親に怒られるし、本当に時々… 誰も見ていないときにやっちゃいます」
「ふむ。ここの硬いパンもやわらかくなるだろうし、美味けりゃなんでもいいとわしは思うけどな」
「まぁ そうなんですけど、お行儀っていうのもわかりますし…。だから “時々” です」
「ふむ、なるほどな…」
アウグストは納得した様子でうなずくと、急に顔をきりりと引きしめた。
「ではマヤ、患部だが痛みは?」
「痛くありません」
「ふむ。湿布が効いたか、薬か…」
ぶつぶつとつぶやきながら、つづける。
「午後に湿布と包帯を巻き直すから、そのとき少し動かしてみよう」
「はい」
「随分と良さそうで問題もない感じだな。では今日一日大人しく寝てろよ?」
「はい」
うなずくマヤを見て机の方へ行きかけたが、戻ってくる。
「そうだ、何か質問があるか?」
「いえ、別に…」
と言いかけてマヤは黙ってしまった。
……質問じゃないけど、言ってみていいかしら?
「あの、質問じゃないですけどいいですか?」
「ふむ、なんだ?」
「タオルとか洗面道具とか… あと色々持ってきたいので、一回部屋に帰りたいんですけど…」
「それだけ痛みを感じないということで良い傾向だが、駄目だな…」
「……そうですか…」
なぜ駄目なんですか? と反論せずにうなだれるマヤに、優しく説明する。
「数日間、ここで安静にさせると報告を出してあるから許可はできん。だが今日そのうちペトラが顔を見せるだろうから、そのときに持ってきてくれるように頼むのはかまわん」