第18章 お見舞い
「診察はあとでするから、温かいうちに食べなさい」
「はい」
「ふむ。ではあとで」
アウグストはカーテンを閉めると、自分の机へ向かった。
「いただきます」
手を合わせたマヤの目の前に、その香りを胸いっぱいに吸いこんで想像していた黄金色のコンソメスープが。
早速スプーンで一口すくい、口に運ぶ。
……んん~! これこれ!
調査兵団の食堂で出されるコンソメスープは鶏からとった出汁でキャベツと玉ねぎと人参を煮込んでいる。胡椒が少し多めなのかスパイシーで美味しい。
食べる前からその香りを堪能して待ちわびていた朝食は、頭に思い描いていたとおりの味だった。
マヤは心から満足して、最後の一滴まで美味しくいただいた。
「ごちそうさまでした」
マヤが食べ終えてから10分ほどしてから、アウグストがやってきた。
「開けるぞ」
と言ったときにはもう、カーテンは全開。
綺麗に空になっている皿を見ながら、白い錠剤を二錠出した。
「ふむ。完食だな、よしよし。薬を飲んでおけ」
そうして今朝新しく持ってきた水差しとコップをサイドテーブルに残して、残りをトレイにまとめ始めた。
「先生、すみません…」
昨日の水差しやコップ、朝食の食器を綺麗に重ねてトレイに乗せるとこう言いながら出ていった。
「かまわん、仕事だからな。気にするな」
食堂に返却に行くアウグストの背中に向かって頭を下げた。
「ありがとうございます」
数分で帰ってきたアウグストはマヤの前に立った。
「食事は美味かったかな?」
「はい! 実は朝、窓を開けてたらコンソメスープの匂いがしてきて待ち遠しかったんです。だからもういつも以上に美味しくって!」