第6章 食堂の兵長
オルオはパンを手に持ったまま、マヤの声に耳を傾けた。
「昨日ペトラは兵長のことをファンでいるのが一番って言ってたけど、もし真剣に兵長のことを好きなら応援しなきゃ…」
「そうだよな。マヤはあいつの友達だもんな」
「うん… でもオルオの想いも、ペトラに伝わればいいなって思ってるよ、心から」
マヤは申し訳なさそうにうつむいた。
「なんか… どっちつかずで… ごめん…」
「いや、俺の方こそお前を困らせてるよな。ペトラが幸せだったら俺はそれでいいんだ」
「オルオ…!」
「そりゃ… 俺と幸せになってくれたら、それが一番だけどよ」
パンにガブッとかぶりついて、ニヤリと笑った。
「やっぱりオルオっていい人!」
「おぅ、いい男だろ? 惚れたか?」
「ふふ。どうだろうね」
「まっ、お前がどうしてもって言うなら、考えてやらんこともないけどよ」
「調子に乗りすぎ! ペトラがいたら怒られてるよ」
「だな」
二人は笑い合いながら朝食を取っていたが、オルオが先に食べ終わった。
「マヤ、相変わらず食うの遅いよな」
「あはは…」
「先に行くわ、悪いな」
「ううん。気にしないで」
「じゃあ お疲れ~」
オルオがトレイを持って立ち去ったかと思うと後ろの方で、おはようございまーっすと彼の大きな声が聞こえた。
……兵長に挨拶してるのね。リヴァイ班だもんね。
振り返らずにそう思いながら、マヤはスープを飲んでいた。
しばらくしてふと、テーブルの上にハンカチが置いてあることに気づいた。
……あっ! ペトラのだ。
忘れたのね。そそっかしいんだから。
あとで渡してあげようとマヤが手を伸ばしてハンカチを取ろうとしたとき、向かいの席にスッと誰かが座った。
………!
マヤはその人物の顔を見て、ハンカチに手を伸ばした姿勢のまま固まってしまった。
眉間に皺を寄せてすこぶる不機嫌そうに黙って座ったのは、リヴァイ兵長だった。