第18章 お見舞い
そして今、深く眠るマヤを見下ろしている。
処方された薬の影響もあるだろうし、無事に壁内に帰還できたことへの安堵も当然あるだろう。
その寝顔は穏やかで、呼吸も安定していて規則正しい。
……骨が折れてなくて良かったな…。
心の中で語りかけ、そっとマヤの頬に右手を添える。
ふれあった肌から伝わるマヤのぬくもり。
ここに来ると決めたときから、起こす気などなかった。
ただずっと気にかかっていて。書類を読んでいても、報告書を作成していても、ふとしたときに空を見上げても。何をしていたって。
マヤの顔が浮かんだ。どうしているかと気にかかった。
団長室でアウグストの報告を聞くまでは、心配でたまらなかった。
そして報告を聞いてからは、ただ顔を見たかった。
今やっと叶った。それだけで充分。何もいらない。
リヴァイは満足げに目を細めた。マヤの頬に添えていた手を離すと静かに部屋を出ていった。
ピッピッピッ、ヒーヨヒヨヒーヨ。ピッピッピ、ヒーヨヒヨ。
「……んん…」
鳥のさえずりでマヤは目が覚めた。
ぐっすり眠ったあとの爽快感が全身を包んでいる。
ベッドの中で大きく伸びをするが、どこも痛くはない。
ピッピッピッ、ヒーヨヒヨヒーヨ。ピッピッピ、ヒーヨヒヨ。
「ふふ、朝からにぎやかね」
ベッドから素早く出ると窓を開けた。
医務室の窓から見える大きな樫の木に、ヒヨドリが一羽。
灰褐色の羽毛に覆われてふっくらと見える腹部には白い斑点が美しくならんでいる。青灰色の頭頂部は冠羽(かんう)と呼ばれ周囲の羽毛より長く伸びているのだが、その冠羽を逆立てた様子は、まさに “つんつん頭” で実に愛らしい。ぱっと目立つ頬の茶色の羽毛もチャーミングだ。