第18章 お見舞い
アウグストは壁の時計に目をやり、もうこんな時間かとつぶやいた。マヤも見れば夕刻の6時を過ぎている。
「何も食べてないんだろう? 食事を取ってきてやるからな」
「すみません」
アウグストが医務室を出ていく。
……ごはん…。そういえば全然食べてない…。
食事に意識がいくと、急激におなかが空いてきた。
ぐぅぅぅ。
マヤ以外誰もいない医務室で、腹の鳴る音が響く。
……良かった…。アウグスト先生が出ていったあとで。
こんなにも大きな音でおなかが鳴るなんて、子供のころ以来かも。
ふふとマヤは微笑んで、ベッドの上から医務室を見渡した。
「今夜はここで寝るのかぁ…」
思わず声が出る。
医務室はアウグストの机に回転椅子、患者の椅子、診察用の寝台、薬品棚が入り口から見て右側に配置してあり、左側にはベッド四床が白いカーテンに仕切られて設置されている。
マヤのベッドは窓側に置かれている二床のうちの一つだ。
ひらかれた窓から入ってくる風が、ほんの少し涼しくなった。
ばたん。
風を感じていると扉の音がして、アウグストが夕食を持って帰ってきた。
「待たせたな」
ベッドの脇のサイドテーブルにトレイを置く。
「ありがとうございます。……早かったですね」
「すぐ下だからな」
医務室は食堂の真上にある。
「わしは書類仕事があるから、そこにいるが…。気にせずゆっくり食べろよ」
「はい。いただきます」
手を合わせたマヤをちらりと見てから、アウグストは去り際にカーテンを閉めた。
カーテンが開けられたままだと、落ち着いて食べられないな…。でも… かといって、自分でカーテンを閉めると感じが悪いのではないかと心配していたマヤは、アウグストの気遣いに感謝した。