第18章 お見舞い
「胸部に痛みがあるということだが、具体的にはどんな?」
「えっと、ベッドで寝ていて起きようとしたときにこのあたりに鈍い痛みが走って…」
右の乳房のすぐ下のあたりを押さえながら答える。
「でも包帯を巻いてもらってからは気になりません」
「ふむ。ちょっと診せてもらうよ?」
「はい」
「じゃあ上を脱いで」
アウグストの指示どおりに、ブラウスを脱いだ。
「今から視診と触診をおこなう。包帯はわしが取ろう、腕を上げて」
素直に両腕を上げたマヤの胸部にきつく巻かれた包帯を、しゅるしゅると素早くほどいていく。
形の良い大きめの乳房が姿を現した。
アウグストはまず、皮膚の発赤(ほっせき)がないか確認する。炎症を起こしていれば充血して赤くなるからだ。
……わずかに赤いな…。内部で炎症を起こしている…。
発赤の次は腫脹(しゅちょう)、要するに患部が腫れてふくれていないか。
……そんなには腫れていないが多少は…。
視診の限りは、打ち身といったところか。
「マヤ、見た感じでは骨折してなさそうだが、こればかりは触ってみないとわからない。触るけどいいな?」
乳房を剥き出しにした状態は、診察とはいえ気恥ずかしく顔を赤らめてうつむいていたマヤだが、はいと小さく返答した。
「右の乳房の真下あたり… このへんだな?」
該当箇所をアウグストは自身の左手の人さし指、中指、薬指の三本を揃えた状態にしてぐっと押した。
「……っ。は、はい」
眉間に皺を寄せたマヤを見て鋭く訊く。
「痛むか?」
「はい…」
「ちょっと我慢してくれよ…。これはどうだ?」
最初に押した部位から少しずつずらしながら、リズミカルにぐいぐいと力強く押していく。
「大丈夫です…」
また痛みがくるのかと身構えたが、意外と痛くはない。