第17章 壁外調査
あれこれと思い返しては顔を赤らめていたマヤをかまうことなく、ユージーンは話をつづける。
「そう、兵長のクラバットなんだ。かけろと言われたときはすごく意外な感じがして戸惑ったよ」
ユージーンの知る限りでは、リヴァイ兵長があのような対応をしたことは他にない。
「……だからその、マヤが特別な存在なんじゃないかと思ってな」
「特… 別…?」
「あぁ。だから君をあまり見ない方が僕の身のためだってこと」
……僕だって自分が可愛いから。あの兵長に睨まれたくないんだ。
そう思いながら手綱をぐっと握れば、聞こえてきたのはマヤの淋しそうな声。
「ユージーンさん、私がリヴァイ兵長の特別だなんてことは… ありません」
……私が兵長の特別だったなら…。
そう願ったけれど、そうじゃない。兵長にとって私は、大切な部下のひとりにすぎない。
私が兵長の特別なのではなく、兵長が私の特別なのだから。
「兵長はとても強くて…、優しい人です…。部下の兵士のみんなを守って戦ってます。ただ、それだけだと思います」
ユージーンはマヤの凜とした声に聞き惚れてしまった。そして心をこめてこう返した。
「そうだね。僕もそう思うよ」
……そう、兵長はもちろん僕たち部下の全員を命を懸けて守ってくれている。それは全くそのとおりだ。
その上でマヤ、君は特別なんだと僕は思うけどな…。
だが今それをマヤに強要しても仕方がないし、兵長もそんなことは望んでいないだろう。
いつかマヤが、きっと気づくだろうから。
ユージーンはそう思い、話題を変えた。