第17章 壁外調査
「恐らく診察で見たり触ったりするのも、本当は嫌なんじゃないかな…」
「そんなことないと思いますよ? ユージーンさん、何か勘違いしてません?」
「いや、勘違いなんかじゃないと思う」
そう言ったきりしばらくユージーンは前方をまっすぐ見つめていたが、意を決したらしく口をひらいた。
「最初にマヤが本部に運びこまれたときに呼ばれたのも僕なんだ」
「……はい」
衛生兵はユージーン以外にあと三人いる。その中でも一番ベテランなのがユージーンだ。
「それで意識のない君を楽にするために… その… 衣服を緩めた。診察もあるしね」
言葉に少し詰まったユージーンの方を思わず見ると、顔が少し赤い。
……きっとブラウスのボタンを外したっていう意味なんだわ。
マヤがそう思っていると、話はつづけられる。
「すると兵長は巻いてるクラバットを外して “かけろ” と言ったんだ。僕は受け取って君の胸元にかけた」
「……え?」
……クラバット…?
クラバットって、兵長がいつも首に巻いているあれ… よね?
「あっ!?」
もしかしてコップの水がこぼれたときに使った白い布は兵長のクラバットだったの!?
「どうした? 大きな声出して」
「……確かに胸に白い布がかけられてたけど、兵長のクラバットだったなんて知らなかったです…」
……そうよ、知らなかった。
あのとき… 何故か兵長が掛け布団をめくって、そこにあった白い布を使って…。一瞬なんで布がこんなとこに? と思わないでもなかったけど…。それより兵長とずっと距離が近くて、お水を飲ませてもらったり、こぼれて拭いてもらったりで。胸がどきどきしっぱなしで、それどころじゃなかったんだもの…。