第17章 壁外調査
「兵長が私に… 何をですか?」
マヤの声には心からわからないという気持ちがこもっていた。
「あれ、違うのか? さっき兵長が怖いって聞こえたからてっきり…」
「あ、それは兵長が怖いっていうのは私じゃなくって…」
マヤは真上に広がる大空を見上げながら、ゆっくりと話す。
「私に包帯を巻いてくださったときに、ユージーンさんとハンジさんが兵長が怖いと話してたでしょ? そのことなんですけど…」
「あぁぁぁ! あれね…」
「はい…。なんでお二人は兵長が怖いのかなと不思議に思って」
「ん? それでいくとマヤは兵長が怖くないのか?」
「ええ。前まではちょっと怖いと思ったこともあるんですけど、今は… きゃっ!」
ちょうど荷馬車の車輪が石を踏み、ガタガタと大きく揺れた。
「大丈夫か!?」
「はい」
小柄なマヤは下からの突き上げにガクンと大きく体が跳ねたが、幸い無事だ。
「結構、今のは激しかったよな。僕も腰にきた…!」
「あはは…、騎馬と違って荷馬車はこれがありますもんね」
「そうだな」
二人は笑い合う。
「で、さっきの話だけど…。僕が兵長を怖がってるのは…。これ、言っていいのかな…」
最後の方はぶつぶつと小さな声になっている。荷馬車のガラガラという大きな音でマヤにはよく聞こえなかった。
「ん? どうしたんですか?」
「あ、いや…。あのときに兵長が怖いって言ったのは、包帯を巻くのに僕が肌を見たりなんかしたらあとが怖いって意味だったんだけど?」
「……なんで?」
「それは…」
「 ……というか診察してもらったときに見てますよね? なのに?」
「それはそうなんだけどさ…」
ユージーンは、やれやれ困ったな… どう説明しようと軽く目をつぶった。