第17章 壁外調査
胸部を包帯で固定したことにより、動けば胸に走る鈍い痛みはほとんど感じなくはなった。
だがこれから長い時間をかけて荷馬車に揺られて帰ることを考慮すれば… と、ユージーンはマヤに鎮痛剤を処方した。
薬を服用してからしばらく経ったのちから、先ほど目覚めるまでの記憶がない。
「そうか、ちょっと強い方の薬を飲ませたから気になってて…。気分が悪くないなら良かった」
「……強い薬だったんですね。道理で薬を飲んでから今までの記憶が全然ないです」
「はは、そうだろ? ぐっすりと眠ってたもんな」
笑うユージーンに、マヤは口を尖らせた。
「本当に鎮痛剤なんですか? 睡眠薬だったりして…」
「いいや、鎮痛剤さ! ……でも、麻酔薬寄りのきつめのやつだ」
「………」
黙ってしまったマヤに慌てて。
「君のためだからな! できるだけ楽に帰れるようにと思って…」
「あ、はい! ありがとうございます。ごめんなさい、昨日からずっと色々あってなんだかぼんやりしてしまって…」
「そりゃ巨人に捕まったんだ。よく戻ってきてくれたよ…」
「はい…」
「起き上がっても平気かい? 横になっておいた方がいいんじゃないか? 恐らく一時的に覚醒しただけで、また眠くなるはずだから」
「じゃあ寝ますね」
ユージーンが横になった方がいいと言うならそのとおりにしようと思い、マヤは荷台に敷いてある毛布の上に横になった。
ガラガラガラガラ…。
しばらく二人とも口を利かなかったが、ユージーンが訊く。
「マヤ、さっき兵長が怖いとか言った気がするんだけど」
「え? あ…、はい」
「大丈夫か? 兵長に何かされたのか?」
「……へ?」
マヤは間の抜けた声を出した。