第17章 壁外調査
「おいクソメガネ、朝っぱらから訳のわからんことを言うんじゃねぇ。黙ってろ」
「へ~、訳のわからんことねぇ…。うん! でもいいよ! こうやってマヤが目覚めたんだしね。それに免じてもう放っておいてあげようじゃないか!」
リヴァイは不機嫌な様子でハンジを睨みつけ、ミケとハンジはにやけ顔が止まらない。エルヴィンは顔色ひとつ変えないでいるが、ユージーンは困った様子で床に目をやる。
マヤだけが状況をのみこめず、皆の顔を順番に不思議そうに見ていた。
「マヤ」
エルヴィンの腹の底から響くような声。
「気分はどうだ?」
「大丈夫です。ただ、起き上がろうとすると少し胸が…」
もぞもぞと動こうとするマヤを制する。
「無理をするな。ユージーン、診てやってくれ」
「はい」
そうして診察の結果は、もしかしたらあばら骨が折れているかもしれない、兵舎に帰って医師のアウグスト先生の診察を受けるまでは可能な限り安静にとのことだった。
そして騎馬ではなく荷馬車に寝かされて兵舎に帰還することに決まる。
万が一にも折れていたときのために肋骨を固定することになり、ユージーンとハンジ以外は部屋を出された。
ユージーンとハンジの二人がかりで、なんとかマヤの上半身を起こすことに成功する。
「ではハンジさん、お願いします」
ユージーンから固定用の太めの包帯を受け取ったハンジは、
「はいはーい! じゃあユージーン、ちょっと後ろを向いててくれ」
「はい」
くるりと背を向けるユージーン。
「マヤはバンザーイして。どう? できそう?」
そろそろと両腕を上げたマヤは微笑んだ。
「大丈夫。痛くないです」