第17章 壁外調査
ガラガラガラガラ…。
荷馬車の車輪がたてる荒々しい音が遠くで聞こえる。
……んん…。
少しずつその音が大きく現実的になってくると、身体全体を下から突き上げる振動と荷台が軋むギシギシという音がうるさい。
………!
はっと気づいて目をひらくと、真っ青な空と白い綿雲が飛びこんでくる。
……そうだ。帰るんだった、荷馬車で。
薬のせいか、頭がぼうっとする。
空の青と浮かぶ白を荷馬車の振動に身を任せて、ただ眺めてみる。
マヤはゆっくりと、朝からの出来事を思い出す。
早朝に目覚めると、リヴァイ兵長は変わらぬ姿勢で椅子に腰をかけて私の顔を覗きこんでいた。
「おはようございます…」
「おはよう」
朝からいきなり兵長の顔を間近で見るなんて心臓に悪い。勝手にドキドキしていると “待ってろ” と言い残し部屋を出ていってしまった。
……どこに行ったんだろ…?
起きてもいいよね? と思い身を起こそうとするが、やはり昨夜同様に鈍い痛みが胸に走る。
これは勝手な行動をしてはいけないと判断し、マヤは寝たままの姿勢で待った。
しばらくするとリヴァイは、エルヴィン、ミケ、ハンジ、それに衛生兵のユージーンを連れて帰ってきた。
真っ先にハンジが叫ぶ。
「マヤ! おはよう! あのあとよく眠れたかい?」
「おはようございます。はい、眠れました」
「それは良かった! リヴァイのせいで眠れなかったらどうしようかと心配してたんだよ?」
ニヤニヤするハンジの言いたいことの本当の意味を理解せずにマヤは答えた。
「あはっ、まぁ確かにちょっと最初は兵長とご一緒だなんてびっくりしてしまって寝にくかったですけど、やっぱり疲れてたのかな? 眠れました」
「そう、リヴァイもちゃーんと、わきまえたんだね」
マヤが “何を?” と不思議な顔をするのと、リヴァイがチッと舌打ちするのが同時だ。