第17章 壁外調査
鎖骨のあたりが濡れてしまっている。
「悪ぃ…」
リヴァイはマヤの後頭部を支えていた右手をそっと外すと立ち上がり、テーブルにコップを置いた。
戻ると一瞬ためらっているようだったが、掛け布団に手をかけ訊いた。
「……いいか?」
マヤは水を飲むのを手伝ってもらっていたときのリヴァイの顔の近さや熱い視線、頭の下に差し入れられた手の感触が恥ずかしくて、たまらず目を閉じたところへ、ひやっと水の感触が喉元にして驚いているところだ。
一体、何がいいか? なのかわからないが、こくこくとうなずいた。
するとリヴァイはさっと掛け布団をはぎ、胸元にかけられている白いクラバットを手に取った。
ポケットにはハンカチも入っていたが、こぼれた水の量がハンカチで拭くには多すぎる。さっと見る限り、部屋にはタオルも見当たらない。
「すまなかった」
クラバットでマヤのあご、首すじ… そして鎖骨のあたりの水気を優しく押し当てるように拭き取る。
王都の仕立屋で買ったクラバットは、上質な絹で仕上げてある。肌馴染みが良く吸水性が優れていて、マヤの肌の上で光る水の粒をみるみるうちに吸い取った。
「すみません…」
まるで赤子の肌を清めるような優しい拭き方に、マヤは顔を赤らめながら謝った。
「いや、こぼしたのは俺だ」
拭き終えたクラバットを軽くたたむと、めくっていた掛け布団をかけた。
恥ずかしがってばかりいたマヤだが、なんだかこの感じが初めてではない気がする。
気にかかると恥ずかしさを忘れて一心に思い出そうとした。
……あ!
思い当たると、無意識のうちに笑みがこぼれた。
「ふふ」