第17章 壁外調査
……そんなに見ないで…。
熱い視線に耐えられなくて顔を背けたいのに、頭の下に差し入れられている手のせいで身動きできない。
マヤはせめて今できることは… と、羞恥から逃れるためにまぶたを閉じた。
………。
水を飲むのを手伝ってやっていたら、マヤの口の端から垂れてしまった。
途端にそれまで意識していなかったくちびるに視線が集中する。
水を飲むために半開きのまま震えるくちびるは、まるで口づけを待ち望んでいるようにも見えた。
元々いつも濡れたように輝いているさくらんぼのようなくちびるが、今はコップの水が滴り、ますます艶めかしい。
マヤの口許から目が離せない。
口許にこぼれた水を拭いてやりたいが、右手はマヤの頭の下に差し入れてあるし、左手は水の入ったコップを持っている。
……拭くには、口で吸ってやるしか…。
そんな不埒な考えが一瞬よぎった。
ハッ、何を考えているんだ… 俺は。
自身を心の中で侮蔑したその瞬間、マヤが目を閉じた。
………!
伏せられた長いまつ毛。ほんのりと紅く染まっている頬。水を滴らせながら光るくちびる。
ドクンと胸が跳ねる。
このくちびるにむしゃぶりつきたい。奪いたい、今すぐにでも。吸って吸ってそのまま貪るように噛みついて、無茶苦茶にしてやりたい。
そんな欲望が一度頭をもたげると、留まるところを知らない。
リヴァイは半ば無意識のうちに、ゆっくりと顔を近づけていった。
と、そのとき。
「きゃっ!」
小さな悲鳴に我に返ると、マヤがその大きな琥珀色の瞳を見開いている。
半分ほど水が入っていたコップが傾き、マヤの胸元に水がこぼれていた。