第17章 壁外調査
扉が完全に閉まる音がする。
ハンジがいなくなってマヤは急にこの状況が恥ずかしくなってきた。
……兵長と二人きりだ…。
意識した途端になんだか息苦しく、喉がからからになっていることに気づく。
「マヤ」
「はい!」
名前を呼ばれて驚いた返事の声は裏返っていて、ますます恥ずかしい。
「水…、飲むか?」
「はい」
すっと立ち上がってテーブルの上の水差しから、コップに一杯水を汲む。そのまま持ってくるのかと思いきや、リヴァイはコップを置いた。
マヤのそばに戻り見下ろす顔には、わずかだが気遣わしげな様子が浮かんでいる。
「さっき痛そうだったが、起きられるか?」
「あ…、はい…」
マヤは上半身を起こそうとするが、やはり胸のあたりに鈍い痛みが走った。
「胸が痛くて…」
「無理しなくていい。巨人に掴まれたんだ。折れてなければいいが…」
そうつぶやくと、くるりと背を向けテーブルへ。コップを手に戻ってくると、
「支えてやるから」
と優しく言いながら、右手をマヤの頭の下にそっと差し入れた。そしてゆっくりと少しだけ頭を水が飲めるように傾ける。
「どうだ、痛くないか?」
「……はい」
マヤは頭と枕の間に差し入れられたリヴァイの手の感覚が恥ずかしくてそれどころではなかったが、折角の厚意を無駄にはできない。
必死で口元に寄せられたコップから、ほんの少しずつ水を飲んだ。
なんとか半分ほど飲めたところで、口の端から水か垂れた。
「……あ…」「すまねぇ」
マヤが恥じらうのと、リヴァイが詫びるのが時を同じくして。
………。
水がこぼれたあと、すまねぇと言ったきりじっと口許を見つめているリヴァイの視線が恥ずかしくて。