第17章 壁外調査
「よし! いい返事だね!」
ハンジはマヤの頬にそっと手を添え笑いかけた。
「頼りにしてるよ、マヤ」
「はい、ハンジ分隊長」
「おおっと、マヤ! 任務中はともかく、分隊長呼びはしなくていいから」
「あ…。はい、ハンジさん」
そうだった… とマヤは思い出していた。
ニファさんやナナバさん… その他大勢の先輩が、ハンジ分隊長のことを “さん付け” で呼ぶことに不思議に思っていた新兵のころ。
ハンジ分隊長と何度か言葉を交わすようになったとき、唐突に言われた。
「マヤ、分隊長とかいちいち付けなくていいから」
最初は慣れなかったが、そのうち自然と呼べるようになった。
でも一体どうして? と首をかしげていたが、ハンジさんがエルヴィン団長やリヴァイ兵士長を呼び捨てにしていることと何か関係があるのかな? そういう主義の人なのかな? などと考えたりして。
あれ…?
でも。
ハンジさんに一番近いところにいるモブリットさんは、ハンジさんのことを分隊長と呼んでる気が… する。
なんでだろう?
モブリットさんが男性だから?
……モブリットさんは、特別… だから?
よくわからない… とマヤがぐるぐると思考を巡らせている間に、ハンジが扉の方へ歩いていく。
扉に手をかけ、振り向きざまに。
「リヴァイ、エルヴィンへの報告は私からしておくから。マヤ、しっかり休むんだよ! おやすみ~!」
「わかった」「おやすみなさい、ハンジさん」
それぞれの返事を耳にしながら、手をひらひらと振ってハンジは出ていった。