第17章 壁外調査
マヤは身を起こそうとするが、うっと顔をゆがめた。
「マヤ! いいよ、そのままで!」
「はい…。すみません…」
ハンジの言葉に甘えて寝たままの姿勢で。
「ハンジさん…。いえ… ハンジ分隊長。申し訳ありませんでした。私が巨人に捕まらなければ任務は成功していたかもしれなかったのに…。人類の勝利には巨人の捕獲が必要で…」
申し訳なさそうにするマヤの声は消え入りそうで。
「……そのためなら、私の命なんて…」
その言葉を最後まで言わせず、がしっとハンジは横たわるマヤの肩を掴んだ。
「それは違う!」
ハンジの眼鏡の奥の、少し赤みを帯びた茶色の瞳が激しく揺れる。
「マヤが謝る必要なんかない。私が殺しかけたんだ、マヤを…。頼む、もう二度と自分の命なんて…などと言わないでくれ」
肩を掴む手に無意識のうちに力が入る。
「わかったね!?」
「は、はい」
元気のない様子のマヤに気づく。
「……あれ、大丈夫!?」
「てめぇの馬鹿力でマヤの肩を壊す気か」
リヴァイのひとことで、力が入りすぎていたと知ったハンジは即座に手を離した。
「ごめん!」
「……大丈夫です」
苦笑いのマヤだったが、すぐにその表情は引きしまる。
「命を軽んじるようなことを言ってしまい、すみません」
「……そうだな。お前の命が意味のねぇものなら、これまで失ったやつらのものも、そういうことになる」
リヴァイの低い声に、マヤは真剣な顔でうなずく。
「マヤ、怖い思いをさせてしまったけど、大丈夫かい? これからも一緒に戦えるかい?」
ハンジの問いに、マヤは思う。
……怖かったし、今だって怖くないと言えば嘘になるけれど。
でも、リヴァイ兵長が守ってくれるから。
怖くても戦える。一緒に戦いたい。
「はい!」
そう答えたマヤの顔は、調査兵以外の何ものでもなかった。