第5章 立体機動訓練の森
後ろを歩いていたはずのオルオは、瞬時にマヤの隣に移動してきた。
「マジ?」
「うん」
「サンキュー!」
オルオはマヤの肩をバンッと叩いた。
「……で? どうだった?」
マヤは叩かれた肩に手をやりながら、あはは…と困ったように眉を下げた。
「うん… いるような、いないような…」
マヤが言葉を濁していると、オルオが笑った。
「兵長だろ?」
「……うん…」
「まっ 見たまんまだな。あいつ、わかりやすいもんな」
オルオは後ろ向きに歩きながら、至ってご機嫌だ。
「ペトラが兵長の大ファンだってことは見たらわかるしよ、俺が本当に知りたいのはそこじゃなくってよ…」
オルオの笑顔が、真剣なものに変わった。
「……俺の気持ちに気づいてたか?」
マヤはオルオの顔は見ずに答えた。
「……全然」
「はは… そっか… まっ、そうだよな? 俺、別に伝えてねぇし?」
「うん、そうだね」
「……で、それとなく訊いてくれたか?」
「うん… まぁ…」
オルオは子犬のような目をして、マヤを見る。
「なんだって?」
「オムツしてるころから知ってるから、そんな風に見れないって…」
オルオは目に見えてがっくりと落胆した。
子犬から一気に老けた犬のようになってしまったオルオを見て、マヤは優しく声をかけた。
「でもね オルオ。私… ペトラに言ったよ? 近すぎて気づけない大切なこともあるよって」
オルオが顔を上げる。
「私がそうだったから。マリウスの気持ちに気づけなかった」
「あぁぁ… マリウスな…。マヤ… 」
「うん?」
「俺さ… マリウスとのつきあい、お前に比べたら全然短いけどよ、あいつはお前に本気だったぜ?」
「うん… みたいだね…」
オルオはマヤの瞳を覗きこんだ。
「あいつ結構はっきり好きだって言ってたじゃん。なんで気づかないんだ?」