第5章 立体機動訓練の森
全体的に濃い茶色のその鳥の羽先には、ひときわ目を引く白いまだら模様が浮かんでおり、澄んだ青い空を背によく映えていた。
「ピー ヒョロロロロ…」
……鳶(とび)か…。
まっすぐ伸ばされた手に舞い降りるかのように鳶は、ゆっくりと降下してくる。
マヤの口が動いている。
どうやら鳶に話しかけているらしい。
鳶はマヤの手に止まりそうな距離まで下りてきたが、急にリヴァイのいる方角に首をまわすと、ピーッ!と甲高くひと声鳴き急上昇してしまった。
マヤが驚いた様子で、鳶が見た方向に目をやる。
……気づかれたか!
リヴァイは慌てて身を隠した。
しばらく身を潜めていると、カサッと音がしてマヤは去っていったようだ。
リヴァイは、そのままの姿勢で思いを巡らせていた。
マヤは何をしていた? 鳶と話していたのか?
……変な女だな…。
眉間に皺を寄せると、元いた枝に下りた。
マヤは枝の上で、オルオが折り返してくるのを待っていた。
……カンッ! パシュッ!
立体機動の音が近づいてくる。
「来た…」
オルオが5メートルほどまで近づくのを、じっと待つ。
「オルオ!」
「あっ、マヤ!」
「ここから仕切り直しよ!」
そう叫ぶとマヤは、アンカーを射出し空を切った。
「待て!」
……カンッ! パシュゥゥゥッ!
「また完敗かよ…」
「ふふ。だから2秒にしたらって言ったのに」
二人は森を出たところで、立体機動装置を外しながら言葉を交わしている。
「……じゃあ、よこせ」
勝負に負けた方が立体機動装置を倉庫に戻し、次回の訓練時には持ち出す取り決めにしていた。また使用許可申請書の記入提出もしなければならない。
マヤとオルオが自主訓練をともにするようになってから、それらはすべてオルオの仕事になっていた。
「ん… 今日は一緒に行くよ」
マヤが先に歩き出した。
「なんで? おっ そうか。俺と離れがたいんグアッ… ガリッ! 」
舌を噛んだオルオにマヤは振り返りもしなかった。
「ペトラにオルオの話… してみたよ」