第5章 立体機動訓練の森
マヤの琥珀色の瞳の影が濃くなった。
「そうだよね…。でもずっと言われつづけてたから、そんな重いものだとは思わなかったの」
「はぁ?」
「多分… 今 オルオがペトラにね、お前のこと好きだからって言っても、ペトラは “冗談やめてよね!” ってかわしそうでしょ?」
「あぁ… 確かにペトラはそう言うだろうな」
「そんな感じが子供のころからずっとつづいて… いくらマリウスが私を好きって言っても冗談としか思えなくて…」
「そっか…」
「うん…」
いつしか二人は、倉庫の前まで来ていた。
オルオがギーッと扉をひらく。
所定の場所に立体機動装置を戻し埃っぽい倉庫から出ると、オルオはマヤを振り返った。随分と高く昇った太陽の光にまぶしそうに目を細めながら。
「マヤ、サンキューな!」
「うん。……まずはオルオの気持ち、伝わるように頑張ってみたら?」
「そうだな、まずはそこからだよな。なぁ…、これからも協力してくれっか?」
「もちろん」
優しく微笑んだその顔に、オルオは一瞬惹きこまれる。
「……お前… よく見たら…」
「うん?」
オルオは顔を赤らめる。
「……いや、なんでもない」
照れ隠しに頭をかきながら誘った。
「腹減ったな、食堂行こうぜ!」
「そうね、お腹ペコペコ!」
二人は食堂に向かった。
食堂に入った途端に、大きな声で呼ばれた。
「マヤー! オルオ!」
マヤとオルオは、思わず顔を見合わせる。
カウンターから朝食を取り、大声の主の前に並んで腰を下ろした。
「おはよ! どっちが勝った?」
オルオが声を出す前に、ペトラが制した。
「やっぱり答えなくていいわ。マヤに決まってる」
しゅんとするオルオの横で、マヤは誘った。
「ねぇ… ペトラもたまには一緒に飛ぼう?」
「眠いから嫌」
「起きるときは眠いけど… 朝の森、すごく気持ちいいよ?」
「……布団の中の方が気持ちいいでしょ」
ペトラは相変わらず硬いパンをもぐもぐと噛みながら、オルオを見た。
「あんたもいい加減に諦めたら? マヤに勝てる訳ないよ」
「はぁ? 見てろよ! そのうち勝つから…」
オルオの言葉を全く聞かずにペトラがマヤにささやいた。
「兵長来た!」