第17章 壁外調査
リヴァイ班と応援要員のタゾロは、奇行種との遭遇地点へ到着しようとしていた。グンタが遺体回収用の荷馬車をひいている。
「兵長、このあたりです」
タゾロの声で全員が馬を止めた。
討伐した奇行種の残骸は完全に蒸発している。あのおどろおどろしい臭気と、骨格および肉片は跡形もなく消え失せていた。
そこが奇行種討伐現場だとうかがわせるのは、不自然な様子でなぎ倒されている草むらのみ。
タゾロは周囲を見渡し、あのときに奇行種が出現した方角を見極めた。
「11時の方向から突進してきたので、あちらです」
指さす方向へ進むと、すぐに遺体は見つかった。
タゾロが目撃したときは馬ごと奇行種に踏みつぶされていたように見えたが、馬の死体はない。恐らく生きながらえて地平の彼方へ遁走したのだろう。
無残に踏みつぶされていたのは三人の新兵だった。苦痛に満ちた顔。驚愕で何が起こったか理解できず目を見開いたまま絶命した顔。その顔すらない者。
「……ひでぇ…」
思わずつぶやくオルオ。
何度も仲間の死には遭遇してきたが、いつまでたっても慣れやしない。エルドとタゾロは眉を険しくひそめ、グンタはくちびるを噛みしめている。ペトラは今にも泣き出しそうだ。
リヴァイ兵長を見れば、その白い顔は何も感じてはいないように思える。
……兵長ともなれば、いちいち感傷にひたってられないのかもな…。
オルオが内心そう思ったとき、指示が飛んだ。
「布でくるみ、荷馬車に乗せろ」
「「「了解です」」」
手を合わせて黙とうし、手際よく布でくるむ。女子兵士を扱ったペトラは完全にくるみきる前にポケットからハンカチを出し顔を拭いてやる。
「………」
……怖かったね、辛かったね、痛かったね、寒かったね、もう大丈夫だよ…。
かけてあげたい言葉が声にならない。もう涙がこぼれてしまう。
……泣いちゃ駄目だ。泣いたって仕方がないの。
なんとか堪えて顔を上げるとオルオと目が合った。