第17章 壁外調査
何よ! 私の顔に何かついてる? とでも言って強気でいたいのに、くちびるが震える。
何ひとつ声にならなかった。
そんなペトラの様子にオルオは、ゆっくりとうなずいて何も言わずに背を向けた。
……優しくしないでよ、馬鹿!
すんでのところで涙をこぼさずにペトラは、遺体をくるみ終え荷馬車に運んだ。
白い布にくるまれた三人の遺体が荷台に並んだ。あとは想いを残さずにここを去るだけ。
そう皆が漠然と感じていると、遺体をじっと見つめていたリヴァイが口をひらいた。
「……どんなヤツだった」
誰もがよく聞き取れずに、言葉に詰まっていると。
「こいつらをこんな目に遭わせた奇行種は…、どんなヤツだった…」
その声は掠れ、苦悶に満ちていた。
オルオは恥じた、先ほど兵長は何も感じていないのではないかと思ったことを。
「……7m級でした。腕を真横に広げてものすごい速度で一直線に走っていました。その道すじにあるものは、何もかもを踏みつけて」
答えたタゾロにひとこと返す。
「……そうか」
「そして…」
タゾロが拳をぐっと握った。
「笑ってやがった…! 笑いながら走ってきたんです…」
「あぁ…。それで? それでどうやって殺った?」
リヴァイはタゾロに討伐の様子をあえて訊く。それはあたかも再び奇行種を己の手で屠るかのように。
「はい…。マヤがおとりになって顔の前を飛んで奇行種の速度が落ちたところを、俺がアキレス腱を切りました。それで倒れたヤツをミケさんが仕留めました」
「……そうか。よくやったな。皆、無事だったか? 新兵も?」
「はい。あ、そうだ。一瞬マヤがやられたのかと思ったけど、無事でした」