第17章 壁外調査
スペリオル村まで馬を駆りながら、ギータは並走するジョニーに話しかけた。
「ミケ分隊長、苦しそうだったな?」
「そりゃ… 俺らでも臭くて吐きそうなんだぜ? 分隊長はたまらんだろうよ」
「そうだな…。鼻が利きすぎるのも考えもんだな」
「でもよ!」
二人の会話を聞きつけて、後ろを走っていたダニエルが隣にくる。
「女の匂いも人より嗅げるんだろ? うらやましくね?」
野卑な笑みを浮かべるダニエルに、ジョニーも賛同した。
「それな!」
前を行くマヤに聞こえるかもしれないと思い、ギータは声を強めた。
「お前ら、下品なこと言うなよ」
「なんだよギータ! かっこつけんなって!」
「何を!」
ギータとダニエルが睨み合っているところへ、前からタゾロが馬速を落としやってきた。
「おい、気を緩めるな! 討伐したあとでも目的地が近くても油断は禁物だ!」
「「「すみません!」」」
謝った新兵三人に、あと少しだ!と発破をかけるとタゾロはミケ分隊長の後続の位置に戻っていった。
一連の流れを聞いていたマヤは、前を走るタゾロを頼もしい先輩だなと思いながら手綱を握った。
スペリオル村には、ほどなくして到着した。すでに入村している兵士たちで混雑している。
しばらくすると村の外れの空き地に集合させられた。
「総員注目!」
バリトンボイスが響き渡る。
少し高くなった場所にエルヴィン団長は、白馬のアポロンにまたがって兵士を見下ろしていた。隣には漆黒の青毛のオリオンに騎乗しているリヴァイ兵長が控えている。
「リヴァイ班と第一分隊は見張りに馬の手入れ、遺体の回収。第二分隊は宿営準備、井戸の確認および水の確保。第三分隊は物資の配備および荷馬車の整備。分隊内での振り分けは各分隊長に任せる。以上、解散!」