第17章 壁外調査
「よし!」
無事なタゾロの姿にミケは胸を撫で下ろしたが、もう一人の大切な部下の姿がまだ確認できない。
「マヤ! どこだ!?」
蒸気に目を凝らしても人影は見えず、呼びかけに反応もない。
「マヤ!」 「マヤさーん!」
ミケを始め他の兵士たちも焦り始めたころ、ひづめの音が聞こえてきた。
「……私なら無事です!」
アルテミスに乗ったマヤが皆の元に戻ってきた。
「奇行種が倒れたときに弾け飛んだのですが、アルテミスが受け止めてくれて…」
愛おしそうにアルテミスの首を撫でていたマヤだったが、次の瞬間には顔を引きしめた。
「ご心配をおかけしてすみません。着地が、まだまだ安定しませんね…」
「いや、無事で良かった。アルテミス、お手柄だったな」
ミケのねぎらいにアルテミスは嬉しそうに鼻を鳴らした。
シュウゥゥゥゥ! シュウゥゥゥゥ!
ミケ班の背後では、奇行種の蒸発がピークに達していた。周囲の温度は上昇し、臭気を帯びた空気の湿度は異様に高い。
「クッ…! 速やかにここを離れるぞ」
顔をしかめながらミケはヘラクレスにまたがると、臭気に耐えきれずむせた。
「分隊長! 大丈夫ですか?」
気遣わしげにタゾロが声をかける。
「あぁ…。奇行種の中でも、こいつはかなり臭い…」
青ざめながらスペリオル村の集落の方向を指さした。
「村までは、わずかな距離だ。行くぞ!」
「「「「了解です!」」」」
タゾロ、マヤ、ギータに残りの新兵二人… ジョニーとダニエルが声を揃えた。
ひとつの班は、基本的に四~六人程度の班員で構成されている。ミケ班は前回の壁外調査でマリウスを失い、現在は班長のミケ以下、タゾロ、マヤ、そして新兵のギータ、ジョニー、ダニエルの六人態勢である。