第17章 壁外調査
グサッ!
狙いどおり奇行種のつるつるとした胸にアンカーが突き刺さった… と同時にパシュゥゥッとガスを噴出しアルテミスから飛び立った。
ワイヤーを巻き取り、アンカーの刺さった胸を支点にしながらガスをさらに噴かして、奇行種の顔の前まで弧を描くように飛ぶ。
「グゥアァァァ!」
顔の前を飛ぶ何かに気づいた奇行種が奇妙な叫び声を上げ、走る速度が落ちた。
奇行種は顔の前を飛び回るマヤを掴もうと、水平に伸ばしていた腕をめくらめっぽうに振り回し始めた。
「危ない!」
マヤのワイヤーが奇行種に掴まれそうになり、援護待機しているギータが思わず叫んだそのとき。
ドォォォォォォン!
突如、7m級の奇行種は崩れ落ちた。
奇行種がマヤに気を取られ歩くような速度まで落ちたので、タゾロがアキレス腱を削いだのだ。
「グゥアァァァァァァァ!」
崩れ落ちながら奇声を上げる奇行種のはるか上空には、巨人の肩にアンカーを突き刺していたミケが立体機動で空高く飛んでいた。
アンカーを抜きワイヤーを完全に巻き取ったミケは、最高地点に到達した直後に両手にブレードを持ち、奇行種のうなじを目掛けて全身を回転させながら降下してきた。
キュルキュルキュルキュルキュルキュル、ザクッ!
見事にうなじを削ぎ落としたミケは、そのままドォォォォォォン!と倒れた奇行種の胴体に飛び移り軽々と着地に成功した。
「よっしゃーーーー!」
待機援護していた兵士たちから歓声が上がる。
シュウゥゥゥゥ! シュウゥゥゥゥ!
うなじを削がれた奇行種は蒸気をもうもうと上げ、すでにその肉体の蒸発が始まっている。
「タゾロ! マヤ! 無事か!?」
ミケの呼びかけに対して、蒸気の奥からゆらりと人影が出てきた。
「分隊長、俺は無事です!」
無傷のタゾロが、白い歯を見せた。