第17章 壁外調査
次々と赤色の信煙弾が、青い空を彩っていく。
しばらくすると緑色の信煙弾が上がった。再度マヤは伝達のために、緑色の信煙弾を撃つ。
カチャ! パン! ドォォォォォ!
そしてミケ班は緑色の信煙弾が示す方角へ馬首を向け、速度を落とさず進んでいく。
その後、緊急事態を示す紫色の信煙弾も上がらず、兵士による直接伝達もなく、どうやら無事に初列索敵班が接近遭遇した巨人を振りきれたようだ。
そのまま目的地のスペリオル村に向かう。
今回の壁外調査も、ウォール・マリアを奪還するための兵站拠点を設営し、補給物資の備蓄をすることが目的である。
兵站拠点になるのは、荒廃してしまった街や村だ。
すでにこれまでの壁外調査で、ミシガンという名の小規模の街、ヒューロンと呼ばれる町、そしてオンタリオ村とウォール・ローゼに近い箇所から兵站拠点を設営してきた。
オンタリオ村まではその日のうちに帰還することができていたが、今回のスペリオル村からは宿営を余儀なくされる。
首尾良く巨人との遭遇もなく、順調に何時間も軍馬で駆けた。
景色が変わる。
今向かっているスペリオル村は、広大な小麦畑で生計を立てていた。
村が近づくにつれ広がる、手入れする人がいなくなり荒れ果ててしまった小麦畑が。
痩せた土地、枯れた麦の穂が腐り落ち… 雑草のはびこる畑、ところどころに散らばる農具。
………。
胸が痛い。
そしてそこを通過するすべての兵士の胸には、ひとつの強い意志が自然と宿る。
……必ず、取り戻す!
あたり一帯を覆い尽くしていた小麦畑の果てに、遠くスペリオル村の集落が姿を現したそのとき。
ドォォォォォ!
「黒だ! 奇行種か!」
奇行種出現を表す黒色の信煙弾が左翼前方に上がった。
「マヤ撃て…、いや間に合わん!」
めずらしくミケの声がうわずった。