第17章 壁外調査
ぎぃぃぃぃっ!
門がひらき見えてきた壁外の景色に突進するかのように、出陣を開始する。
「前進せよ!」
どぉぉぉぉぉぉぉ! ごぉぉぉぉぉぉぉ!
団長の号令に兵士の雄叫び、馬蹄はとどろき砂塵は舞い上がる。群衆は拳を振り上げ熱狂していた。
「進め! 進めぇぇぇ!」
熱病のような興奮に沸き返る街の人々が、馬の速度が上がるにつれて単なる線になって後方に流れていく。
マヤは門をくぐる直前に不審な馬車を確認した。
もう御者の顔も、馬車の中から双眼鏡で覗いていた男の顔もわからないほど隊列の速度は出ている。
ただ車体に施されていた大きな紋章だけは、はっきりと認識することができた。
……剣に蛇が巻きついてる…。
特徴的なその紋章を脳裏に焼きつけながら、外門を駆け抜けた。あたり一帯は、三年前の845年にウォール・マリアが超大型巨人と鎧の巨人によって破られるまでは、内地だった。月日が経ちすっかり荒れてしまっている。
市街地だったそこは、ひとつひとつの家屋に家族の営みがあったのに。楽しい団らん、子供たちの笑顔、時には些細な喧嘩をしたりして。笑い声に涙、たくさんの愛があふれていた場所だったのに。
それが今や、うろつく巨人に破壊され、建物の壁は崩れ窓は割れ、地面には雑草がはびこっている。
……いつか必ずここも、取り戻す!
マヤは駆け抜けるたびに、いつも強くそう思う。
「9時の方向に、7m級一体接近!」
響いた叫びに緊張が走る。
「任せろ!」
駐屯兵団の援護班が、すぐさま立体機動で駆けつけてきた。
荒廃しているとはいえ建物の残るこの場所は、立体機動装置を使える。駐屯兵団は壁上の固定砲による周囲の巨人の掃討、それに加えて壁外で接近してくる巨人の討伐を受け持ち、壁外調査に出る調査兵団の援護に徹するのだ。
「援護班に任せて前進! 隊列を死守しろ! 進め! 進めぇぇぇ!」