第17章 壁外調査
……ギータも落ち着いたし、微力ながらも役に立てて良かった。
マヤは内心嬉しく思っていた。
こうやって自分が落ち着けただけではなく、後輩も元気づけられたのはリヴァイ兵長のおかげだ。
あらためて前方にいるリヴァイを見つめる。もうエルドの陰に隠れてしまって一部しか見えない。でもそこにリヴァイがいると思うだけで、マヤは胸が熱くなった。
ドーン! ドバーン! ドーン!
壁上固定砲から発射されたぶどう弾の轟音が聞こえてくる。駐屯兵団が門の外に群がっている巨人を蹴散らしているのだ。
開門まであと少し。
マヤはそのときを今か今かと待ち構えていたが、ふと違和感を抱いた。
視野の端にある何かに。
その方角には開門前の興奮で熱狂する群衆。いつもの光景だ。
ただ群衆の後方に見慣れない馬車があった。燕尾服を着こなした御者がいる二頭立ての立派なそれは、車体に紋章が施してある。
……貴族の馬車だわ! どうしてこんなところに?
目を凝らすと窓から熱心に外をうかがっている人影が見える。遠くてよくは見えないが、若い男性のようだ。そしてその視線の先は恐らく壁外調査出陣前の調査兵団隊列の最先端。
きらりと何かが光った。
……何かしら…? 双眼鏡…?
マヤが眉をひそめたそのとき、大声が響いた。
「開門30秒前!」
思わず壁の上を見る。
駐屯兵団の援護班班長が叫んでいた。
「付近の巨人はあらかた遠ざけた! 頼んだぞ、調査兵団!」
どぉぉぉぉぉぉぉ! 地鳴りのような兵士の咆哮があたりを完全に支配した。
エルヴィン団長の張りのある声が圧倒する。
「訓練の成果を知らしめるときが来た! これより人類はまた一歩前進する! 開門始め!」