第17章 壁外調査
リヴァイ兵長に守られている… そう感じるだけで不思議と緊張で強張っていた身体の力が抜ける。暗鬱におちいりそうだった心も晴れて、勇気がみなぎってくる。
マヤは微笑みながら、うなずき返した。それを確認したリヴァイは顔色を変えずにすっと前を向く。
……兵長、ありがとうございます。不安も恐怖も… どこかへ飛んでいきました。立派に務めを果たせるよう頑張ります。
リヴァイの後ろ姿にマヤは心をこめて頭を下げた。
不安でざわついていた気分がすっきりとし、自分でも驚くほどに落ち着いている。
マヤの変化はすぐにアルテミスにも伝わった。
すっかり穏やかな様子で呼吸も安定している。
「さっきはごめんね、アルテミス。もう大丈夫よ」
ぽんぽんと首すじを軽く叩きながら声をかけると、嬉しそうにブルルルと応えた。
気分が安定すれば、余裕もできる。
マヤは早速、斜め後ろで血の気を失っていた新兵に声をかけた。
「ギータ、大丈夫?」
「マヤ… さん!」
ギータは身体の大きな、いわゆる “力持ち” タイプであるが、その巨体が震えんばかりの緊張にとらわれていた。
無理もない。
第一分隊第一班に配属され、すぐに一つ上のマリウスに子犬のように懐いていた。それが前回の壁外調査で彼の死を目の当たりにしたのだ。
「オレ…、こんなんじゃ…」
マヤはアルテミスを寄せる。
「大丈夫よ! ほら前を見て!」
自分がマリウスにいつもしてもらっていたようにギータの大きな背中を叩いた。
「見えるでしょう? エルヴィン団長にリヴァイ兵長、分隊長と副官の皆さん、リヴァイ班…。私たちを導いてくれるし、守ってくれるわ。あの人たちを信じてついていけば何も怖くないわ。それに…」
マヤはギータのそばかすだらけの顔に優しく笑いかけた。
「私だって、いざとなったらあなたを守るわ」
……そう、守ってもらうばかりじゃない。
私だって、仲間を守ってみせる。