第17章 壁外調査
いつもだったらマリウスが能天気な顔で背中を叩いてくれていたのに。今でも声が聞こえる気がする。
……シケた面してんじゃねぇよ! 大丈夫だって!
そんな些細な行動や言葉ですら守られていたんだなと、マヤはあらためて実感した。
でも。
……いつまでも下を向いてちゃ駄目よ! せっかく兵長が守ると言ってくれたんだから。
昨夜のリヴァイの言葉と熱いまなざしを思い出せば、勇気が湧き上がる気がした。
もっともっと…、強い心が欲しくて。
前方で待機しているリヴァイ兵長の後ろ姿を探す。
角度的にエルドの陰に隠れて肩と背中の一部しか見えていなかったが、ちょうどグンタに話しかけられたエルドが愛馬クロノスを一歩グンタ側に寄せたことにより急に視界がひらけた。
いきなりオリオンにまたがったリヴァイの姿が全身丸ごと目に入ってきて、マヤはその堂々とした騎乗姿勢にはっと息をのんだ。
ぴんと伸びた背すじ。やわらかく手綱を握り、適度に力が抜けた様子の形の良い長い脚はオリオンにぴたりと沿っている。あごを引きまっすぐに前を見据えている小さな顔。後方からなのでその表情は見えないが、間違いなく凜としたまなざしだとわかる。
その美しい馬上の姿に見惚れていると、まるでマヤの視線に気づいたかのようにリヴァイが振り向いた。
………!
目と目が合った瞬間、マヤの心臓は跳ね上がった。
リヴァイはマヤをじっと見つめ、はた目からはわからない程度に軽くうなずいた。
……兵長!
マヤにはわかった。リヴァイのうなずいた意味が。
言葉がよみがえる。声が耳元で聞こえる。握られた手の熱さを思い出した。
……俺が、お前を守る。