第17章 壁外調査
ヒヒン… ブルブルッ。
アルテミスが神経質そうに息を吐き出した。
ブシューッ!
「アルテミス、落ち着かないね…。私も何回やっても慣れないよ…」
ついにやってきた壁外調査当日。
ここはトロスト区南門に向かって伸びている路地。
マヤは今、愛馬アルテミスとともに開門号令までの待機中だ。
前も後ろも待機中の調査兵団の騎馬隊でぎゅうぎゅう詰めの状態。
エルヴィン団長を先頭にリヴァイ兵長率いる調査兵団特別作戦班、通称 “リヴァイ班” の面々…エルド・ジン、グンタ・シュルツ、オルオ・ボザド、ペトラ・ラル。第一分隊長ミケ・ザカリアス、第二分隊長ハンジ・ゾエに副官のモブリット・バーナー、第三分隊長ラドクリフ・キュナストに副官のアーチボルド・ガードナー。彼らの後続は各分隊の第一班の班員から順に待機し、路地を埋め尽くしていた。
マヤは第一分隊第一班所属であるためかなり前方に位置しており、馬上からはエルヴィン団長の金髪が朝陽を受けて煌めいているのがよく見えた。
後ろを振り返ればずらっと整列する騎馬兵がひとつの景色のようになって見えるが、目を凝らすとひとりひとりの顔は緊張と不安に支配されている。
前方の団長や兵長、各分隊長にその副官がある意味良い緊迫感を持ち自信に満ちた精悍な顔つきでいるのに対して、後方の一般兵はやはり恐怖による重圧が大勢を占めていた。マヤの斜め後ろの新兵も例に漏れず青ざめている。
何か声をかけてあげようと思うが、言葉が出てこない。マヤの緊張が伝わるのか密着しているアルテミスもそわそわと落ち着かない。