第16章 前夜は月夜の図書室で
「……だから俺は死なねぇ」
リヴァイはもう一度告げると、自身を見上げている潤んだ瞳を見つめ返した。
「俺が… お前を守る」
「………!」
そして目の前で頼りなげに揺れているマヤの両手を掴んだ。
「約束しよう。俺は必ず… お前を守る」
「へい… ちょう?」
……どういう… こと?
マヤは激しく混乱していた。
気づけばリヴァイ兵長が守ると言っている。そしてなぜか手をがっちりと握られている。
……これは一体、どういう状況…?
話の流れでいくと恐らく兵長は、死んだマリウスの代わりに守ると言ってくれているような気がする… けど…。
どうして? そんな訳ないよね…?
落ち着け、落ち着いて考えて!
えっと…。
私が壁外調査が不安だと漏らした。今まで平気だったのは実はマリウスが守ってくれていたからと知ったと。でもマリウスはもういない… と。
うん、やっぱり兵長はマリウスの代わりに守ると言ってくれたんだ。
でも、なんで?
……わからない…。
やっぱりそうだ。
リヴァイ兵長のことは、わからない。いつもいつも。
でも…、マリウスが守ってくれていたのは、“想い” があったからだった。
もしかしたら兵長も… そういう “想い” がある… の?
そう考えただけで顔が赤くなるのを感じ、胸もどきどきする。
……何か… 何か… 言わなくちゃ。
「……ありがとうございます…」
包むように握られている両手が熱い。
「あ、あの… どうして… ですか…?」
「………」
思い切って理由を訊いたのに、答えは返ってこない。
両手を握られたまま絡んだ視線はどこにも逃れようがなく、もはや心臓が口から飛び出してしまいそうだった。