第16章 前夜は月夜の図書室で
気の弱そうなザックがところどころ言葉を詰まらせながら話した内容は、結局のところマヤへの告白だった。
……やっぱりそうかよ…。
そうだよな、こんなところに呼び出すんだ。それしかねぇじゃないか。
今聞いたばかりの情報を頭の中で整理する。
マリウスがマヤを守ると言っていたこと。いつも一緒だったこと。
マリウスの代わりにマヤとつきあいたいザックだったが、そもそもマリウスとはつきあっていない。
訓練兵のときからザックは想いを寄せていた。ザック以外のやつらも。だがマリウスが牽制していて手出しができなかった。
しかしショーンという野郎にはマリウスの牽制も効かず、マヤを賭けて首席争いをした。ショーンは敗れ憲兵団へ。
………。
おいおいおいおい。
結構な状況じゃねぇか。
それを何も知らなかっただと?
……ったく。どれだけ鈍感なんだよ…。
「よ、呼び出して悪かったよ。じゃあ明日、いよいよだけどお互い頑張ろう」
……やっと終わるか。早く帰れ。
「……や、やっぱり…」
去りかけた足音が止まる。
「……明日、死ぬかもしれないんだ。あ、あんなに優秀だったマリウスだって死んだんだ。そうだろ?」
……嫌な予感がする。
「マヤ、つきあえなくていいから、て、手を握ってもいいかな?」
……やっぱりな。だが、手…だと?
臆病なやつだな。
まぁいいだろう。どうせ即座に断られるんだ。
しかしいくら待ってもマヤの拒絶の声が聞こえてこない。
……は? 何をしている。早く追い返せ。
リヴァイの眉間の皺が深くなったときに、図書室にマヤの優しい声が響いた。
「……わかった。いいよ」