第16章 前夜は月夜の図書室で
格納庫へ向かう道すがら、ハンジは説明を始めた。
「生け捕りで使う捕獲網を取りに行くところなんだ」
「捕獲網… ですか」
「そう」
先頭を歩いていたハンジは立ち止まり、マヤの横にならぶ。
「巨人捕獲は帰り道でしか実行しちゃいけないんだ。いや、いけないってことはないんだけどね、私はいつだって捕獲すべきだと考えている! だけど壁外調査は捕獲だけが任務じゃないしね…、それはわかっているつもり!」
うんうんとひとりで大きくうなずくハンジ。
「捕獲は帰りにおこなうからエルヴィンに、今回初参加のマヤへの作戦の説明は初日の夜に宿営地でしろと念を押されてるんだけどね…」
ここでマヤの両肩をがしっと掴む。
「でもマヤ! そんないきなり前夜に露営地で色々説明されてもわかんないよね? やっぱ前もって知っておきたいよねぇ!?」
がくがくと大きく両肩を揺さぶられながら、マヤはなんとか返事をした。
「え、ええ、まぁ…」
「聞いたかい? モブリット! マヤも強く望んでいることだし、私としてはエルヴィンの言いつけに背くのは非常に心苦しいが仕方がない!」
「強く…?」「望んでいる…?」
モブリットとマヤがそれぞれつぶやくが、ハンジは全く意に介さない。
「捕獲網も見せてあげるし、大まかな作戦も教えてあげようじゃないか! さぁ行くよ!」
ハンジは意気揚々と格納庫へ突進した。
「分隊長! 待ってください!」
慌ててあとを走るモブリット。
急に走り出した二人に呆気にとられていたマヤだったが、はっと気づいてあとを追う。
すぐに格納庫は見えてきた。